
合奏をすることに決まったけど、どんな準備をすればいいかな…?



そうだね、特に合奏を前で見る立場の人にとって準備はとても大切だね。



なおさら何をしたら良いのかわからないよ!



じゃあ今日も一緒に考えてみようね。
吹奏楽部の顧問になったり学生指揮者になって、いざ合奏!……と意気込んでみたものの、「何から準備すればいいの?」と戸惑った経験はありませんか?
実は、合奏の出来は当日のタクトを振る前にほぼ決まっています。事前準備が整っている合奏と、ぶっつけ本番の合奏では、同じ奏者・同じ曲でも仕上がりが大きく変わります。
この記事では、合奏に臨む前に指揮者・指導者が行うべき準備を3つのステップに整理して解説します。初めて吹奏楽部を担当する先生や学生指揮者はもちろん、「なんとなく合奏を回している」という方にも、ぜひ一度確認していただきたい内容です。
曲合奏の事前準備 ステップ① 曲を知る
合奏を指導するためには、まず指導者自身が誰よりも曲を知っていることが前提です。「知っている」というのは、なんとなく聴いたことがあるというレベルではなく、スコアを読み込み、音楽の全体像を把握している状態を指します。
スコアリーディング(スコアを読む)
スコア(総譜)は作曲家が書いた、その曲の全てが込められた手紙のようなものです。
曲に取り組む前に、できるだけ読み解いておきたいところです。
特に以下の点を必ず確認しましょう。
- 編成は?
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選曲の時点である程度把握していることがほとんどですが、改めて確認しておきましょう。
特にクラリネット、トランペット、ホルン、トロンボーンがいくつセクションがあるのか(1st、2ndなど)、
打楽器は最低何人必要なのか、人数が足りないとしたら省略できる楽器があるのか、他パートから一時的に助っ人を頼むか など。 - 調性は?
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主調はなにか、転調はあるのか、それぞれの調で調号が多くなり難しくなる楽器はどこなのか、を把握しておくと音間違いなども見つけやすいです。
- 拍子は?
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拍子の変わり目や複合拍子がある箇所は事前にマークしておきます。
特に奇数の拍子(5/8、7/8など)の場合は基準の音符をどのようにグループ分けするのか
(5/8は2+3
なのか3+2

なのか、7/8は2+2+3

なのか
3+2+2
なのか、など)判断しておきたいところです。
- テンポは?
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メトロノーム記号で指定がある場合はそのテンポをインテンポ(演奏するテンポ)として良いことが多いですが、
AllegroやAdagioなど、文字による速度記号・発想記号だけの場合は、メトロノームでの適切なテンポを考えておきましょう。
また、練習の初期段階では本番どおりのテンポでは演奏できないことがほとんどなので、どのくらいゆっくりから練習を始めるかも考えておきたいです。 - 曲の構造は?
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マーチなら序奏、第1マーチ、第2マーチ、トリオ、ブリッジ、トリオの再現もしくは第1マーチの再現など、
また吹奏楽曲に多く見られる3部形式の場合はA-B-Aなど、大体の構造を知っておくと曲の概要を掴みやすいです。 - 出てくる楽語・発想記号は?
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曲の中に出てくる楽語や発想記号は作曲家が音符だけでは伝えきれなかったことを補足しているものです。
演奏の助けになるものや、そもそも曲の根幹に関わってくるものもあるので、しっかりと意味を理解しておきたいところです。 - メロディーは?
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どのパートが主旋律を担当しているかを確認します。
また音符の上だけでなく、音としてメロディーや対旋律を知っておきたいところです。 - ハーモニーは?
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できればすべてのハーモニーの移り変わりを知っておきたいですが、まずはマーチの裏打ちやTuttiでの和音など、ここぞという目立つ場所だけでもハーモニーを確認しておきたいです。
これらのスコアを読む際はソルフェージュを並行して行うのが理想です。
視唱(楽譜を見て歌うこと)が得意な方は音符を見ただけで音を思い浮かべられるのでとても有利ですが、吹奏楽の場合は移調楽器などもあるので難しいことも多いと思います。(私もムリです 笑)
なので楽器などで音を出しながら読んでいくことがベターでしょう。
- ピアノや鍵盤楽器で弾いてみる
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スコアを読むうえで一番ポピュラーな方法はピアノや鍵盤楽器で演奏することでしょう。
プロの指揮者もスコアを読む際にはピアノで演奏することが多いです。
メロディーだけでなく、和音も弾いて響きを確認できることが一番のメリットです。ただ、あまりピアノ演奏に慣れていない、苦手である場合は指1本でメロディーを弾いてみるだけでも良いと思います。
ただの記号である音符が実際に音になる瞬間です。 - 管楽器で演奏してみる
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ピアノがあまり得意でなく他の管楽器を経験した人や、学生指揮などの場合も自分の得意な楽器で演奏することもいいでしょう。
吹奏楽器の場合は和音を演奏することができないですが、メロディーや対旋律を演奏することによって実際に音楽を体感することができます。また吹奏楽の場合は移調楽器が多いので、自分の楽器と実際に鳴る音(実音)の違いなどをしっかりと理解できるようになります。
- 参考になる音源を聞く
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一番手軽に楽譜を音として捉えられるのが音源を聞くことです。
手軽ではあるのですが、スコアリーディングの段階ではデメリットも多く、譜面を読むスピードが演奏しているテンポに追いつかなかったり、主旋律は聞くことができても対旋律や内声は聞き取りにくかったり、と注意が必要なこともあります。
できればスコアを読む際には補助的な役割としておいたほうが良いでしょう。
頭の中だけでなく、体で音楽を感じることで、指導の言葉が格段に具体的になります。
また、経験上「知らない音は聞こえない」ということが多いです。
勉強してここにこんな音が鳴っているはず、こういう音があるんだ、と認知していないと実際の合奏でも聞き取ることができない事が多いです。
しっかりと勉強をして合奏の際に知らない音が無いようにしたいですね。
必要楽器の把握と準備
スコアを読む過程で、次の点も確認しておきましょう。
- 特殊管楽器
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コールアングレ(イングリッシュ・ホルン)、エスクラリネット、アルトクラリネット、ソプラノサックス、フリューゲルホルン、などなど…普段あまり使われていない楽器が指定されている場合、楽器は用意できるのか、または代替案を考えておくのか、準備が必要です。
- ミュートなどの小物類
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特殊管楽器同様に小物類も注意が必要です。
金管楽器のミュートもストレートミュートなら手持ちの場合も多いですが、カップミュートやワウワウミュート(ハーマンミュート)だと微妙、バケットミュートなどはほぼ持っていないことが普通でしょう。これらも効果を鑑みて対策が必要になってきます。
- 打楽器類
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先程のスコアリーディングの際にも編成の話が出ましたが、ここでは人数の話だけでなく使用楽器についても考えましょう。
一般的なスネアドラム、バスドラム、シンバル、ティンパニくらいだと何も考えずに揃っているバンドが多いと思いますが、ゴングやチャイムなどが出てくると少し怪しくなってきます。
また、小物類でもさまざまな楽器が必要とされたり、中にはあまり聞いたことのない楽器が出てくることもあるでしょう。
大人のバンドなら奏者だけでも対応できるかもしれませんが、中学生や高校生のバンドだとそうもいかないので、指導者の方でどのようにするか、対策が必要です。
今まで私が体験した、ちょっと変わった楽器- バンブーチャイム(竹鳴子)
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ウインドチャイムのぶら下がっている部分を竹に変えたような楽器。
ホームセンターで竹を買って自作しました 笑
- グラスハープ
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グラスに水を入れ、縁をこすって音を出す楽器。
音程の指定があったので100円ショップで何10個も叩いて音程を確認して購入しました。
音源を聴く(できれば3種類以上)
スコアを読んだら、次は実際の演奏を聴いて完成形のイメージを作ることが大切です。
音源を聞くには次のような方法が考えられます。
- CD
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かつては音源として主流でしたが、近年登場するシーンが著しく減ってきています。
音質やクラシック音楽のアレンジ物を演奏する際の参考音源としてはいまだに優位な点が多いです。難点としては新曲のリリースが少し遅いこと、コストがかかること、場所をとること、でしょうか。
- YouTube
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今は演奏団体だけでなく出版社まで参考演奏をYouTubeで公開することも少なく無くなってきました。
手軽に聴けて、コストも掛からない点、そして新曲も早く聞くことができることが圧倒的なメリットです。
一方でデメリットとしては音質がCDより劣ることが多いのと、アマチュアの演奏も含まれることが多いので演奏者はちゃんと選ばなくてはいけないこと、くらいでしょう。
- 音楽系サブスク(Apple Music、Amazon Music、Spotify、 ナクソス・ミュージック・ライブラリー など)
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CDに変わって音楽をしっかりと聞きたい人たちに支持されつつあるのが音楽系のサブスクでしょう。
音質もハイレゾと言われるCDを超えるようなスペックを持つものも多く、また、膨大な曲数があるのでクラシック音楽などはさまざまな種類の演奏を参照できることになります。
また、ジャンルも幅広いのでCDなどと違って普段自分の聞かないような音楽まで手軽に試すことができます。
デメリットとしては月額の料金がかかることと、吹奏楽の演奏についてはまだ偏りがあって充実しているとはいえないところです。
ポイントは「できるだけ1つの曲を3種類以上の演奏で聴く」ことです。
1つの録音だけを聴くと、そのテンポや解釈が「唯一の正解」に見えてしまいます。複数の演奏を聴くことで、曲の本質的な姿と、解釈の幅の両方が見えてきます。
演奏機会の少ない曲などは難しい場合もありますが、できるだけいろいろな種類の演奏を聞きましょう。
曲合奏の事前準備 ステップ② 合奏の準備をする
曲の理解が深まったら、次は合奏当日に向けた実務的な準備です。
スコア・パート譜に小節番号を振る
合奏中に「○小節目から」と指示するためには、スコアとパート譜の小節番号が一致していることが必須です。
印刷されていない場合は、スコア・パート譜ともに小節番号を記入しておきましょう。長期間取り組む曲については、10小節ごとではなく毎小節番号を振ることで、合奏中の指示がより正確になります。
その際にズレがないように最後の小節数を確認したり、練習番号ごとの小節数を確認することも有効です。
合奏をスムーズに行うためなのはもちろん、その先の練習の際にも細かい指示が出しやすくなります。
テンポを事前に決めて伝える
初期段階の練習において、テンポの設定はとても大切です。
特にその曲を最初に合奏する際には曲の指定のテンポ(インテンポ)で演奏しても形にならない事が多いでしょう。
演奏能力の高いバンドであれば「インテンポで吹けないうちに合奏をしても意味がない」ということで、吹けるようになるまで合奏をしない選択もあるかもしれませんが、スクールバンドや多くのバンドでは、その「吹けるようになるまで」の指導が必要です。
どのように練習をして、どのようなことに気をつけていかないといけないのか、を合奏で伝えるのが効率がいい場合が多いのです。
そのためにも合奏のテンポをあらかじめ決めて伝えておいて、奏者たちに練習や準備をしてもらいます。
「まだインテンポで吹けるようになっていない」前提で、かなりゆっくりのテンポを指定して合奏の中で少しずつ上げていく事が多いです。
コンクール曲や大きな演奏会の曲など、長期的に練習する曲では合奏以外の練習でも計画的にテンポを上げていく計画を立てると、練習がしやすくなります。
機材の準備
合奏を支える道具の準備も欠かせません。
- メトロノーム
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練習の初期段階では欠かせないのがメトロノームです。
演奏のテンポが安定しない、縦が合わない、リズムがおかしい、など問題が起こるほとんどの原因が
「演奏技術が足りない」からです。(当たり前ですが 笑)
そして演奏技術を向上させるにはある程度の時間的な強制力が必要になります。
そのため、練習の初期段階ではメトロノームが欠かせないと考えます。
ハーモニーディレクターやジャスティーなどのキーボードを使用している場合は、それらに付属しているメトロノームが良いでしょう。
メトロノームが付属しているキーボードを使用していない場合はデジタルのメトロノームを使用しましょう。
近年ではスマホやタブレットのアプリでも良いと思います。
いずれを使用する場合もアンプなどに接続し、全員が大きい音量で演奏中でも聞こえるようにすることが重要です。
- キーボード
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YAMAHAのハーモニーディレクターやRolandのJUSTYなど、合奏の際に何かしらのキーボードを使用しているバンドも多いと思います。
音程合わせや音の確認、ハーモニーの確認など多岐にわたって活躍するキーボードですが、初級バンドの初期段階の練習では音間違いなどの確認などに使用することが多いでしょう。
また、和音などを鳴らしてハーモニーの確認などをすることもあります。
いずれにしてもメトロノームの項でもお伝えした通り、アンプなどで音量を増幅して演奏中でも聞こえるようにすることが必要です。
また、費用面などの問題でハーモニーディレクターやJUSTYが用意できない場合は、一般的なキーボードなどでも流用できることもあります。
その際に必要な機能は「基本チューニングを440Hzから442Hzなどに変更できること」です。
現在吹奏楽で使われている管楽器と鍵盤楽器のほとんどは442Hzでチューニングされているからです。一般的なキーボードの場合はハーモニーディレクターやJUSTYと違って純正律が使用できませんが、
和音の音程を合わせようとするのでなく、単音だけなら大きな問題は無いでしょう。 - 録音機器
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合奏を常に客観的に聞くことができればそれに越したことはないですが、なかなか難しいものです。
そこで合奏を録音することをおすすめします。
合奏中に気づけなかった間違いや、今後の練習方針を定めるうえでも非常に助けになります。
まずはスマホや簡易的なICレコーダーなどでもいいので録音をして聞いてみてください。
また機材にお金をかけると、よりクリアで鮮明な録音ができるようになりバンドの状態がよく分かるようになってくるので、余裕があればこだわってみることをおすすめします。
メトロノームには昔ながらの振り子のメトロノームと、デジタルでクリック音を鳴らすものがあります。
それぞれのメリット・デメリットがありますが、どのようなシーンでどのように使用したら良いのでしょうか?
- 振り子
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- テンポを視覚的にとらえるので、拍から拍の間隔をとらえやすい。
- 音としては小さいので視覚に頼らないといけない。
- 目で見る習慣がつくので指揮を見る練習や習慣につながる。
- デジタル(クリック)
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- 曲に慣れていない段階でも譜面から目を離さずにいられる。
- (音量に配慮すれば)必ず耳に入ってくるので強制力が強い
- 譜面とクリック音だけに集中しがちで周りを聞かなくなりやすい。
以上のことから
曲の練習し始めで譜面から目を離せない状態……デジタルのクリック音
↓
曲に慣れてきて譜面から目を離せるようになってきた状態……振り子のメトロノーム
という流れがスムーズに移行できるでしょう。
曲合奏の事前準備 ステップ③ 出席者(欠席者)を把握する
地味に見えて、実は合奏の質に直結するのがこの準備です。
特に大人のバンドは毎回メンバーが揃うことのほうが難しいので、当日のメンバー状況と本番のメンバー状況が重要になってきます。
合奏を始める前に、当日欠席のパートを把握しておきましょう。
- フルート2本のうち1本が欠席なら、バランスの指示を変える必要があります。
- ソロパートの奏者が欠席なら、その箇所の合奏計画を変更しなければなりません。
- 複数のパートが同時に欠席している場合、その合奏箇所を後回しにするという判断も必要になります。
また、長期的な出欠席がわかると、そのメンバー状況に合わせた練習内容を組むことができます。
曲合奏の事前準備のまとめ:合奏は「準備8割」
ここまでの準備をまとめると、次のようになります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 曲を知る | スコアリーディング・音源を聴く・必要楽器の確認 |
| ② 合奏の準備 | 小節番号・テンポの事前通知・機材の準備 |
| ③ 出席者の把握 | 欠席パートの確認・合奏計画の調整 |
経験を積んでけば「合奏当日に何とかなる」という余裕も出てくるかもしれません。
しかし準備に時間をかけた分、合奏の密度は確実に上がります。
ぜひ次の合奏前に、このチェックリストを参考にしてみてください。
次の記事では、いよいよ「合奏中にやるべきこと」について解説します。


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