
いよいよ合奏だ…ドキドキ



ついに合奏だね。
ここまでしっかり準備をしてきたんだから大丈夫だよ。



それでも実際にどういうことをしていけば良いのかわからない…



じゃあ具体的にどういうふうに進めていくか見てみよう
はじめて吹奏楽部の顧問や学生指揮者になったとき、多くの人が最初に戸惑うのが「合奏の進め方」です。
「とりあえず通して吹かせてみたけど、何をどう直せばいいのかわからない」「合奏中に何をして良いのかわからない」——そんな経験はありませんか?
この記事では、合奏をいざ始めるときに何を確認し、どんな手順で進めていくかを、指導経験が浅い先生でも実践しやすい形でまとめました。
「現状を知る」→「問題を特定する」→「表現を伝える」→「次の練習につなげる」という流れで解説します。
ここまでの準備はこちらをご覧ください。




01|まずは現状を把握しよう
合奏をはじめる際に「いまのバンドの状態」を正確に知ることが何より大切です。
合奏時間の中で現状を把握することによって、何をどう直すべきか、どのように合奏を進めていくかの方向性が定まってきます。
練習初期段階での合奏の進め方
練習に入って間もないタイミングの合奏では、細かい表現よりも「音が間違っていないか・並んでいるか」の確認を優先するほうが良いでしょう。以下のポイントを意識しながら進めましょう。
- メトロノームを使う
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演奏技術が拙いうちは、どうしても「自分の都合のいいように」演奏しがちです。
演奏しやすいリズムに変えてしまったり、難しいところではゆっくりになってしまったり、とそれぞれが自分勝手に演奏しているうちは合奏になりません。
そこでまずは統一したテンポやタイミングでそれぞれが演奏できるようにするために、メトロノームを使用します。
その際のテンポは、練習の初期であればゆっくりから練習することをオススメします。
目安としてはインテンポ(指定されているテンポ、本番で演奏したいテンポ)の50〜60%くらいのテンポからスタートすると、余裕を持って演奏できるでしょう。
ゆっくりのテンポで合奏することによって技術的に余裕ができ、いろいろなことに気を遣えるようになってきます。
- 音型をつけすぎない
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音型をつける、とは言葉の通り音の形を短くしたり、抜いたりして音楽的に適切な形にしていくことですが、
こちらも初級バンドの練習初期段階から音型をつけていくことは、あまりオススメできません。なぜならば、初級の演奏者のほとんどは「しっかりと息を入れて吹けていない」ことが多いです。
管楽器は特にまずしっかりと管に息を入れて楽器を鳴らすことが大切です。
そして「音型をつける」ということはほとんどが四角くまっすぐ吹いた状態から「短くする」か「音を抜く」ことが多いです。
つまり「音型をつける」ということは「息を引く」ことに繋がることが多いということです。
結果として音を短くしようとして、音の出ている瞬間にしっかりと息が入っておらず楽器がしっかりと鳴っていない、ということが起こりやすいのです。
そのため、初級バンドはまず音を張り気味でしっかりと楽器を鳴らしながら吹く習慣をつけたほうが、音型をつけたあとでも良い音で吹けるようになるでしょう。
- 休み小節は声に出してカウント
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自分が休みの際は次の演奏箇所まで数えているのが当然ですが、数え損なったり数え方が周りと違ったりということで入りそこねることがよくあります。
そこで練習の初期段階では、休みの人は声にだして数えるようにしましょう。
しっかり数える意識付けになるのと同時に、数え方の統一ができるようになります。
- 付箋を活用する
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前で合奏をしている先生や学生指揮などの人は、練習の初期の段階では指揮を振るのではなく、演奏はメトロノームに任せて聞くことに専念したほうが良い場合が多いです。
特にビギナー指導者にとっては指揮を振りながら演奏を聞いて問題箇所を見つけて…などと同時にやるのは至難の業です。
まずは聞くことに集中をして問題箇所や練習箇所の絞り出しをしましょう。
その際に「付箋」を活用することをオススメします。
もちろん気になるところなどに貼って書き込んで…という使い方が王道ですが、曲を通しているときなどはそんな時間はありません。
まずは気になるところにペタペタと貼っていくだけでも、あとから見ればここはこうだった、ここをこうした方が良い、などと思い出せるものです。
ぜひ活用してみてください。
- 欠席者の音を確認する
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欠席者がいる場合は、その人の音がないことによってどのような影響を与えるかをできるだけ想定しておきたいものです。
人がいないことによってメロディーの音量バランスが変わってきたり、和音の性質が変わって聞こえてきてしまったり、と小編成のバンドであればあるほど影響が大きくなってきます。
準備の段階で誰がいて誰がいないのか把握しておく必要があります。
状況によって違う「音が足りない」同じ「音が足りない」にしても、状況によってさまざまな対応の変化が出てきます。
元々はちゃんと存在している奏者がたまたまその日はお休みした、という場合はそんなに問題がありませんが、頻繁に休む人なら補強が必要か、他の人にそのパートを任せるかなどの対応になってきます。
それに対して、もともと曲の求めている編成よりも人数が少なくて、音が足りないことが元から想定されている場合もあります。
この場合ははじめから音が足りないことがわかっているので、それによってどのような影響がありそうなのか、調べておくことが必要です。
他パートも一緒に演奏しているので該当パートがいなくても大丈夫、とか、1人しか演奏しない場所なのに音が無くなってしまうのであれば、だれか他の人に吹いてもらうか、など事前の準備が必要です。
大部分がそもそもできていない場合
「合奏してみたが、ほぼ全員がボロボロだった」という場面は初級のバンドではよく起こります。
その場合は、以下の3点を確認してください。
- 曲のレベルを再確認する——生徒の技術水準に対して曲が難しすぎないかを確認する。あまりにもレベルが高すぎる場合は他の曲の検討も必要。
- 自分たちで練習できる範囲を確認する——合奏の前に個人・パートでやるべきことは何なのか、どうすればよいのかを生徒たちと改めて確認しておく。また、どこまでなら生徒たちだけに任せられるかの線引きをする。
- 合奏に臨む心構えを確認する——合奏は合わせる練習であり、しっかりと練習した状態で参加するべき、という価値観の共有。(ただ状態によっては吹けていなくても合奏の場で練習方法を伝達する場合もある)
02|うまくいかない原因を特定する
合奏中に「なんかここが合わないな」「音がおかしいところがある」と感じたとき、感覚で進めてしまうと時間だけが過ぎてしまいます。原因を論理的に特定する手順を身につけましょう。
奏者に「なにかおかしい」とだけ伝えても初級バンドの多くの場合は解決になりません。
うまく行ってない箇所と原因を解明するのは指導者の務めです。
うまくいかない原因の見つけ方
とはいえ、なにかがおかしい、と思ってもすぐに原因を特定できるようになるには、それなりの経験が必要となります。
そこで、原因を見つけるために有効な方法をいくつか挙げてみます。
- ゆっくり演奏して確認する
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速いテンポだと見逃しやすいミスなどもゆっくりにすることによって原因が見つけやすくなります。
また、奏者にとってもよく聞きながら演奏することができるようになるので、自分でもミスに気づきやすくなります。
- 人数や声部を絞って演奏する
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人数や声部を絞ることによって全体ではわかりにくかった問題が表面化しやすくなります。
メロディーだけ、伴奏だけや特定のパートだけ、1stだけなど、要素を限定することによって、聞くべき対象が明確になり違和感の原因を発見しやすくします。
- 音を伸ばして確認する
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これはゆっくり演奏して確認の延長線上ですが、どんなに細かい音符でもどんどんゆっくりにしていくと、最後はロングトーンになります。
音を間違っているのか、音程が悪いのか、バランスが悪いのかなど、繊細な違いなどはこのように音を伸ばしていくことによって発見しやすくなります。
初期段階でのチェックポイント
今まで挙げてきた方法でチェックをしていきますが、具体的には何をチェックしていけば良いのか?という疑問も出てくると思います。
初級バンドの練習の初期段階では次のようなことに注意をしながらチェックをしてみてください。
- リズムは合っているか
- 音を間違えていないか(調号・臨時記号も含めて)
- 音の長さや形・アーティキュレーションは合っているか
まずは楽譜に書いてあることを技術的な問題がなく演奏できるようにしたいところです。
03|「わかっていない」と「わかっているけどできない」を区別する
指導でとても大切な視点のひとつが、この区別です。同じ「できていない」でも、原因が全く異なるため、対処法も変わります。
理解していないのでどのように練習して良いのかもわからない
まずは理解できるように説明や解説が必要。
- リズムの読み違い
- 音の間違い
- 入るタイミングがわかってない
- 音程の違いに気づいていない
理解はしているが、技術が追いついていない。
個人練習やパート練習でやることが明確になる。
- 速い連符で指が回らない → 指の練習
- 高い音・低い音が出せない → 高い音、低い音の練習
- 音程の違いに気付いてもすぐに対応できない
→ 音程合わせの練習
注意
何ができていないのか、良くないのかがわかってない状態のまま何度も繰り返し演奏させても、なかなかは改善しません。
まず何が良くないのか、良い状態がどのようなものなのかを正しく理解させることが、練習の効率を大きく左右します。
たとえばリズムが合わない場面では、「なんで合わないの?」と聞く前に、このリズムの読み方は理解できているのかどうか、指導者が判断する必要があります。
多くの場合、奏者が理解できていない場合では、奏者自身もそのことに気付いていないことが多いからです。
つまり、合奏の時間の中で「わからないこと」を無くし、「わかっている」もしくは「わかっているけどできない」状態にすることが合奏の目的のひとつ
とも言えるでしょう。
04|音楽的な表現・主張を伝える
音やリズムを揃えるのを先にするか、ほぼ同時くらいに音楽的な表現や主張についても伝達していきます。
奏者が音楽的な専門教育を受けている場合は、クラシック音楽としてのセオリーを理解しているので、自然とフレーズの取り方や音楽の方向性など、表現方法についても奏者に任せられる部分が多くなってきます。
それに対して普通の部活動やアマチュアのコミュニティバンド・社会人バンドの場合は、クラシック音楽の中で一般的とされるセオリーから伝えていく必要があります。
伝えたい音楽的な表現のポイント
- フレーズの始まりと終わり・頂点を示す
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このフレーズはどこから始まって、どこで終わるのか。
また、フレーズの頂点(重心とも呼ばれる)はどこで、どこに向かっていきどこに収まっていくのか。
このような点を統一するためにも、指揮者・指導者からの意見を伝えておきましょう。
- 音型・アーティキュレーションを共有する
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練習の際の音型はどうするのか、完成形ではどのようにしたいのか、
アーティキュレーションはどのように演奏してほしいのか、
などを伝えます。
- 構成感を伝える
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奏者たちは多くの場合、自分のパート譜だけを見ながら演奏しています。
すると、今演奏している楽曲がどのような構成になっているのか、それぞれの場面でどのように演奏するべきなのかを理解することは難しいことが多いでしょう。
そこで指揮者・指導者がスコアを読んで分析(アナリーゼ)したことを共有する必要があります。
「ここはもっとこういうふうに演奏してほしい」
という言葉の根拠として
「トリオだから」とか「再現部だから」「コーダだから」といった言葉が続くことで説得力が増し、奏者も意図を汲み取りやすくなります。
- バランスを調整する
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たとえば旋律は主役、対旋律は準主役、伴奏は脇役、のように、目立たせたい動き(声部)から順に音量のバランスを取って聞こえやすくすることも、合奏の大きな目的のひとつです。
また、声部ごとだけでなく、同じ声部内(同じ動き同士)でも各楽器ごとの音量バランスを取ることで、イメージした音色に近づける事ができます。
曲の構成や仕組みを解説する
上にも出てきたような音楽的な主張を伝えるためには、指導者自身が曲の構造やしくみを深く理解していることが不可欠です。
楽曲の概要(◯部形式の曲、とか◯調から始まり◯調に転調しているとか)から始まり、
「Aメロはこのテーマを表している」「ここは再現部で最初と対応している」といった細かい説明や解釈を伝えることによって、演奏者の理解と表現の質を一段引き上げます。
ここまでの流れとして、合わせることなどの技術的なことを先に進めてきましたが、音楽的な表現を実現するためには、技術的な土台が不可欠です。
いくら「もっと歌って」と要求しても、音が出せない・指が回らない状態では表現しようがありません。
技術と表現は車の両輪です。
どちらかだけではなく、同時に向上させていきたいものです。
05|次の合奏・練習へ向けての指針を出す
合奏の時間の中で「わからないこと」を無くし、「わかっている」もしくは「わかっているけどできない」状態にすることが合奏の目的のひとつということを上で言いましたが、
合奏で明らかになった「わかっているけどできない」課題を整理し、次の個人・パート練習に何をすべきかを明確に伝えて終わりましょう。
「わかっているけどできなかった」ことを次の練習につなげる
できなかったことと対処法の例は次のようになります。
| 指が回らないところがあった | テンポを落として反復練習、リズムを変えた練習など |
| 音程が合わないところがあった | チューナーやキーボードなどを使って音程を合わせる練習 |
| 高い音・低い音が出ないところがあった | 音域を拡大するための基礎練習を継続的に取り組ませる |
| リズムが難しいところがあった | 分解して単純にして練習したり、口で歌ったりする練習 |
合奏の最後の時間や、終わったあとの時間に「振り返りとまとめ」の時間として使うのも良い習慣でしょう。
奏者本人たちが自覚した今後への課題と、指揮者・指導者が認識した今後への課題を共有しておくことも大切なことです。
まとめ
- 合奏前半に「現状把握」をしっかりとする。どんなこと、どんなところができていないのか。
- うまくいかない箇所は「テンポを落とす・人数を絞る・伸ばす」で原因を特定する。
- 「わかっていない」のか「わかっているけどできない」のかを区別して対処を変える。
- 「わかっていない」ことを「わかっているけどできない」にするためにやるべきことを考える。
- 音やリズムが揃ったら、フレーズ・バランス・構成感など音楽的な主張を伝える段階へ。
- 合奏の最後に課題を整理し、個人・パート練習への指針を必ず出す。
吹奏楽において、合奏練習はもっとも重要な練習のひとつとなります。
充実した合奏練習を行えるようにして、より良い音楽を演奏できるようにがんばりましょう!

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